AIに「構成」と「中身」を先に作らせる
プレゼン資料づくりで時間を持っていかれるのは、色やレイアウトを整える工程ではなく、「どういう順番で話すか」を決め、「各ページに何を書くか」を言葉にする工程です。この骨組みづくりがいちばん重く、そしてちょうど、生成AIが得意なところでもあります。
ChatGPTのようなAIに、資料の構成と各ページの要点を先に作らせて、デザインに手をつけるのはその中身ができてからにする。この順番にするだけで、白紙のスライドを前に固まる時間がなくなります。
やり方は大きく3ステップです。①構成(アウトライン)を作らせる、②各ページの中身を書き出させる、③それをスライドに移す。
まず全体の構成を作らせる
最初にやるのは、資料全体の設計図づくりです。ここでAIに頼むのは「見出しの一覧」。何ページ構成で、各ページに何を置くか、その骨格だけを先に決めます。
たとえば、新入社員向けの説明資料ならこう頼みます。
新入社員向けに「社内の情報セキュリティ」を説明するプレゼンの構成を作って。
・時間は10分、スライドは8枚
・各ページに「見出し」と「そこで伝える一言」を付けて
・つかみ→本題→まとめ、の流れで
返ってくるのは、たとえばこんな形です(イメージ)。
1. タイトル:入社おめでとう、まず知ってほしいこと
2. なぜ大事か:情報漏洩は「うっかり」から起きる
3. よくあるパターン:メール誤送信・私物USB・のぞき見
4. 会社のルール:やっていいこと、ダメなこと
5. パスワードの基本:使い回さない、強くする
6. 怪しいメールの見分け方:3つのチェック
7. もし漏らしたら:まず誰に報告するか
8. まとめ:今日から守る3つの約束
全体像がこの粒度で返ってくれば、話の抜け漏れや順番のおかしさが、その場で見えてきます。まだ1枚も作っていない段階で、資料の良し悪しをほぼ判断できます。
うまい構成が出てこないときは、たいてい渡した前提が足りていません。聞き手は誰か、目的は何か、持ち時間はどれくらい。この前提が具体的なほど、構成の精度は上がります。頼み方そのもののコツはAIに“伝わる”指示の書き方にまとめました。
構成の材料が手元の資料にあるなら、先にそれを読ませるのが近道です。長い企画書や議事録を渡して要点を出させ、その要点をもとに構成を組ませる。資料の読ませ方はAIで長文・PDF・記事を要約する方法が参考になります。
各ページの中身を書き出させる
構成が固まったら、次は中身です。ページを1枚ずつ指定して、「スライドに載せる文字」と「発表者が話す内容(スピーカーノート)」を分けて出させます。
さっきの構成の3ページ目「よくあるパターン」について、
・スライドに載せる箇条書き(3〜4行、短く)
・発表者が口頭で話す内容(2〜3文)
を分けて書いて。新入社員に伝わる言葉で。
こう頼むと、たとえば次のように返ってきます(イメージ)。
【スライドに載せる箇条書き】
・メールの誤送信:宛先と添付ファイルは、送る前にもう一度見る
・私物のUSBは使わない:データの持ち出しは会社支給のものだけ
・画面ののぞき見:離席時はロック、社外では背後に注意
【スピーカーノート】
情報漏洩の多くは、悪意ではなく日々のちょっとした油断から起きます。なかでも多いのがこの3つで、送信前にひと呼吸おく、席を立つときは画面をロックするといった小さな習慣で、その大半は防げます。
スライドに文字を詰め込みすぎると、途端に読みにくくなります。「スライドは短く、詳しい説明は口頭で」と役割を分けて頼むと、そのまま使える形に近づく。1ページできたら、次のページ、その次のページ、と同じ調子で進めます。手作業だと一番だれるところを、まとめて片づけられます。
1ページずつが面倒なら、まとめて出す手もあります。そのうえで仕上げに、次のように“貼り付け用の形”でまとめ直しておくと、このあとが一気にラクになります。
ここまでの全ページを、PowerPointのアウトライン貼り付け用にまとめて。
・各ページの見出しは行頭、箇条書きはその下に字下げ(Tabひとつ)
・スピーカーノートは分けて、「ページ番号+話す内容」の一覧で
見出しと箇条書きがこの形になっていれば、次のスライド化でそのまま流し込めます。スピーカーノートは別にもらっておき、あとで各スライドのノート欄に貼ります。
できた中身をスライドに移す
文字がそろったら、最後はスライドの形にします。やり方はいくつかあります。
- PowerPointのアウトライン機能に流し込む:手早いのは、PowerPointの「表示」→「アウトライン表示」に切り替えて、見出しと箇条書きをそのまま貼る方法です。見出しがスライドのタイトルに、字下げした行が本文の箇条書きに変わります。1枚ずつ手で起こすより、ずっと速い。(Googleスライドを使うなら、ページごとにテキストを貼って、あとから整えるのが確実です。)
- アウトラインからスライドを生成するツールを使う:構成のテキストを貼るだけで、レイアウトや配色まで含めた体裁を作ってくれるサービスもあります(Gamma など)。機能や料金は変わりやすいので、使う前に各サービスの公式で最新を確かめてください。
どちらを選ぶかは、ゴールしだいです。会社のテンプレートや配色にきっちり合わせたいならPowerPointルート、社内向けにとにかく手早く見栄えよくまとめたいなら生成ツール、が選びやすい。Microsoft 365を使っているなら、PowerPointの Copilot に下書きを作らせる手もあります。ただし仕上がりは結局プロンプトしだいなので、ここまでの「構成→中身」の考え方はそのまま活きます。
どちらを選んでも、レイアウトの下ごしらえまでは一気に片づきます。ロゴや配色を会社のトーンに合わせたり、図や写真を差し込んだりする仕上げは、まだ人の手のほうが早くてきれいです。
AIの出力はたたき台
ここまでの流れで、資料は8割方かたちになります。ただ、そのまま本番に出せるかというと、そうではありません。AIが返すのは、あくまでたたき台です。ここを勘違いして丸ごと任せると、かえって直しに時間がかかります。
とくに手を入れたいのが、次の3つ。
- 話の順番:AIの構成は無難にまとまりますが、あなたの聞き手に刺さる順番とは限りません。1本出させたうえで、ページの並びだけ入れ替える。これは自分でやったほうが速いし、的確です。
- 具体例:「よくあるパターン」の中身は、自社で実際に起きたヒヤリハットに差し替えると、途端に説得力が出ます。ここはAIには書けません。
- 数字:市場規模や実績の数値は、あとで必ず自分の資料と突き合わせる。
「構成と中身の下ごしらえをAIに、練り込みを自分に」。この分担が、結局いちばん速いやり方です。
社外に出す前に確かめること
便利さと引き換えに、任せきりにすると失敗しやすいポイントがあります。とくに社外向けの資料では、次は必ず確かめてください。
数字と固有名詞は、AIを信じすぎない。AIは、それらしい数字や社名を、自信たっぷりに間違えて書くことがあります。「市場は年20%成長」「導入企業は500社」といった数値が、根拠なく紛れ込む。この“もっともらしい間違い”はハルシネーションと呼ばれる生成AIの弱点です。社外に出す資料は、数字・社名・日付を一つずつ、元の資料や公式情報と突き合わせてください。
社外秘や個人情報は、そのまま貼らない。顧客名や未公開の売上を含む資料を材料にするときは、伏せ字や仮名に置き換えてから渡す。会社の情報を扱うなら、社内のルールも先に確認を。
見た目の完成度と中身は、別ものです。生成ツールを使うと、それだけで完成度が高く見えます。ただ、きれいなだけで論理の通っていないスライドは、発表するとすぐ見抜かれます。デザインの仕上がりと、話の説得力は、別々に評価してください。
浮いた時間を仕上げに回す
構成づくりに費やしていた時間が、数分に縮む。この変化のいいところは、時短そのものより、浮いた時間の使い道が広がることです。
これまで枠組みを考えるだけで力尽きていたなら、その体力を、自社の具体例を足したり、聞き手に響く一言を練ったり、声に出して通しで練習したりと、AIには作れない部分に回せます。資料の出来を最後に分けるのは、下ごしらえが何分でできたかではなく、そこから先にどれだけ手を入れたか、です。
腰が重いのは、たいてい最初の一歩です。そこをAIに任せて、浮いた分を中身の練り込みに回す。まずは今度の資料で、構成を作らせるプロンプトを一度貼ってみるところから始められます。
