「他人に見られて困る情報」は、AIに入れないのが基本
ChatGPT や Gemini に相談していて、ふと手が止まったことはないでしょうか。「この内容、どこかに残ったり、学習に使われたりしないのかな」と。
先に結論から言います。他人に見られて困る情報は、AIに入れない。この一線を守るだけで、多くのトラブルは避けられます。
というのも、無料や個人向けの消費者プランでは、入力した内容が既定でAIの改善(学習)に使われうるサービスが多いからです。使われたくなければ、自分で設定をオフにする「オプトアウト方式」(=自分でオフにしない限り使われる仕組み)が主流。裏を返すと、何もしなければ使われる前提、ということです。
ただ、こわがりすぎなくて大丈夫です。設定をオフにすれば、少なくとも今後の入力は学習に使われなくなります。それでも「絶対に外に出ない」とまでは言い切れないので、設定と、入れる前の線引き。この両方を持っておくのが確実です。
そもそも、入力した内容はどこへいく?
扱いは、契約の種類でざっくり分かれます。
- 消費者向け(無料・個人プラン):既定で学習に使われうる。使わせたくなければ設定でオフに。
- 法人向け・API版(会社が契約して使う専門的な使い方。個人利用の人は読み飛ばしてOK):既定では学習に使わない、とされることが多い(ただし規約次第。かならず確認を)。
同じ「ChatGPT」でも、無料で使う場合と、会社の契約で使う場合とで、扱いが変わりえます。まず「自分は今どの立場で使っているのか」を意識する。ここが出発点です。
入れてOK/避けたい、の線引き
判断に迷ったら、この表を目安にしてください。
| 入れても比較的安全 | 入れるのは避けたい |
|---|---|
| 一般的な質問・調べもの | 氏名+住所/電話/メールなどの個人情報、顔写真 |
| すでに公開されている情報 | マイナンバー・パスポート・免許証・口座/カード番号 |
| 自分で書いた文章の推敲 | 病歴・信条などセンシティブな情報 |
| 仮名・ダミーに置き換えたデータ | パスワードやAPIキーなどの認証情報 |
| 勤務先の機密・未公開情報・営業秘密 | |
| 顧客や取引先から預かったデータ |
覚え方はシンプルです。「他人に見られて困るなら入れない」「自分以外の人の個人情報は入れない」。この二つのものさしで、たいていは判断できます。
「私のこの使い方は?」あるあるで考える
迷いやすい例で、あてはめてみましょう。
- 自分の職務経歴書を添削してもらう → 自分の情報なのでOK寄り。ただし住所・電話・生年月日は、消すか仮名にしてから。
- 仕事のメール文面を直してもらう → 一般的な言い回しの相談ならOK。取引先名・金額・未公開の社内情報が入るなら、その部分は伏せる(またはダミーに置き換える)。
- 家族や子どものことを相談する → 相談の中身だけならOK寄り。ただし実名・学校名・住所など、本人が特定できてしまう情報は入れないでおきましょう。
学習に使わせない設定(消費者版・2026年時点)
消費者版でも、多くは設定で学習をオフにできます。スマホアプリでもPC(ブラウザ)でも、画面の隅にあるプロフィール(アカウント)のアイコンから「設定」を開く、という入り口はだいたい共通です。ただし項目名や場所は変わりやすいので、以下は2026年時点の目安。最新の手順は各公式で確認してください。
- ChatGPT:既定でオン。「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフに。履歴に残したくないときは「一時チャット」も使えます。
- Google Gemini:「設定」→「Gemini Apps アクティビティ」を開いてオフに。オンのままだと、人によるレビューやAIの改善に会話が使われうる状態です。
- Claude:2025年8月に方針が変わり、今はオプトアウトしないと学習に使われうる。「設定」→「プライバシー」→「Improve Claude for everyone」をオフに(Work/Team/Enterprise は対象外)。
- Microsoft Copilot:サインイン中は使われうる(「設定」からオフにできます)。サインインせずに使う場合は学習に使わない、とされています。
操作そのものは、ChatGPTの始め方・基本 と同じくらい簡単です。設定画面を一度開けば、数十秒で終わります。
実際に ChatGPT の「データ コントロール」を開くと、こんな画面です。

ChatGPTの「データ コントロール」画面(2026年7月時点)。いちばん上の「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、以降の入力が学習に使われなくなります。表示は変わることがあるので、最新は公式でご確認くださいね。
「オフにしたから安心」には、二つの落とし穴
設定をオフにしても、勘違いしやすい点が二つあります。ここは正直にお伝えします。
一つめ。「オフにすれば過去の入力も消える」わけではありません。多くの場合、オフが効くのは将来の入力から。すでに送った内容がさかのぼって取り消されるとは限りません。
二つめ。「学習オフ=誰にも見られない」でもありません。安全確認や不正利用のチェックのために、一定期間データが保持されたり、人がレビューしたりすることがあります。実際、Gemini の公式も、レビューされたくない情報は入力しないように、という趣旨の注意をはっきり示しています。
だからこそ、設定に頼りきらず、「そもそも機密は入れない」が最後の砦になります。
日本でも、注意喚起や指針は出ている
公的な立場からの呼びかけも出ています。
- 個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 を公表しています。
- 総務省・経済産業省による AI事業者ガイドライン(最新は第1.2版・2026年3月)も、事業者向けの考え方を示しています。
個人で使うぶんには、ここは難しく考えなくて大丈夫。「国も『気をつけてね』と言っている」くらいの、うしろだてとして受け取ってください。自分のケースが規制にどう関わるかといった具体的な判断は、公式の情報や専門家に確認するのが確実です。ここでは「こうした指針が出ている」という事実の紹介にとどめます。
出てきた答えも、うのみにしない
線引きが必要なのは、入力だけの話ではありません。AIが返してくる答えのほうにも、注意がいります。
AIは、事実と違うことを自信ありげに書いてしまうことがあります(ハルシネーション)。数字・固有名詞・大事な情報は、AIの回答だけで決めず、一次ソースで裏を取る。入れる情報の注意と、出てきた答えの確認。この二つはセットで覚えておくと、ぐっと使いこなしやすくなります。
迷ったら、仮名に置き換えてから聞く
できることを整理すると、こうなります。
- 使っているアプリの学習設定をオフにする(消費者版)
- 個人名や社名は仮名・ダミーに置き換えてから相談する
- 本当に機密なら、そもそも入れない。必要なら法人・API向けの利用を検討する
- 履歴を残したくないときは、一時チャットなどを使い分ける
- 出てきた答えは、一次ソースで確認する
まずは今日、いつも使うアプリの学習設定を一か所だけ開いてみてください。オンかオフかを確かめる——それが第一歩です。そのうえで、最後はやっぱり「困る情報は入れない」。ここに戻ってこられれば大丈夫です。
用語でつまずいたら、AI用語集 もあわせてどうぞ。
