AIが返してきた答えや、SNSで流れてきた1枚の画像。もっともらしく見えるものほど、つい信じ込んでしまいます。ただ、確かめ方のほうも、道具と手順がそれなりに整ってきました。
確かめる対象は、大きくふたつに分かれます。ひとつはテキストの主張。数字や日付、固有名詞、引用が本当かどうかです。もうひとつは、画像や音声の来歴。それがAIで作られたものかどうかを見ます。前者は出典をたどって原文にあたり、後者は専用の判定ツールにかける。同じ「確かめる」でも、使う道具がまるで違います。まずは、このふたつのレーンを分けて考えるところから。
確かめ方の全体像
| 確かめたいもの | 使う道具 | 手順のかなめ | その道具にできないこと |
|---|---|---|---|
| テキストの主張(数字・日付・固有名詞・引用) | 出典つきAI(Perplexity/各社のDeep Research)+公式・原典 | 根拠ページを開き、主張が本当に書いてあるか原文で確認 | 示された出典が実在・正確とは限らない(自分で開いて再検証) |
| 画像・音声の来歴(AI製か) | 判定ツールVerify(Web・ログイン不要) | ファイルをアップし、来歴情報や電子透かしの有無を見る | 「AIかどうか」の判定機ではない/他社AIは未対応/加工で印は消える |
テキストの主張を確かめる
ひとつ目のレーンは、文章で返ってきた答えの中身です。頼りになるのが、答えと一緒に根拠を示すAI。Perplexityのような出典つきの検索AIや、テーマを渡すと自動で調べてレポートにするDeep Researchは、答えの横に「どのページを見たか」のリンクを並べてくれます。ふつうのチャットが記憶から答えを組み立てるのに対して、こちらは調べた先を見せてくれる。裏取りの起点として使いやすいです。どちらも日本語で、無料の範囲から試せます(回数の上限や料金は各記事に)。
ただ、出典が付いていること自体は、正しさの保証にはなりません。拾ってきたページが古かったり、要約の途中で意味がずれたりはします。だから、間違えると困るところ、つまり大事な数字や日付、人名や社名、そのまま引く一文は、リンク先を開いて原文で確かめます。ここは、AIに調べ物やレポートをまるごと任せたときも同じで、任せた成果物の見直し方はAIに任せた仕事の確かめ方にまとめています。
AIの"出典"は再検証する
ここが、少し踏み込んだ話です。AIは、実在しない出典を、実在するかのように書くことがあります。たとえば、いかにも本物めいた「△△大学2024年の論文によると…」という一文に、それらしいURLまで添えてくる。ところが開いてみると、ページ自体が存在しない。あっても、書いてあるのは主張とはまるで別のこと。答えが自然なぶん、出典まで自然に見えてしまうのが厄介です。こうして作られた出典や引用も、AIが事実をそれらしく誤るハルシネーションの一種です。
だから、AIが自己申告してきた出典は、そのまま信じずに一度ひらく。確かめるのはふたつ。そのページが本当に存在するか。そして、AIが言った内容が、本当にそこに書いてあるか。URLが載っているだけで安心せず、中身まで突き合わせます。この再検証をはさむと、作られた出典に足をすくわれずにすみます。
画像・音声の来歴を確かめる
ふたつ目のレーンは、画像や音声です。「この画像、AIが作ったのでは」と気になったとき、手がかりになるのが来歴の情報。OpenAIが公開している判定ツールVerifyは、ファイルをアップすると、そこにAI由来のしるしがあるかを「検出/未検出」で返します。やることは、Verifyのサイトを開いて、調べたいファイルをアップするだけ。Web上で使えて、ログインもいりません(開き方や注意点は同じ記事にまとめています。日本から使えるかは公式にはっきり示されておらず、実際に開いて確かめるのが早いです)。
Verifyが見ているのは、ふたつのしるしです。ファイルに添えられた来歴の情報(C2PA)と、画像や音声そのものに織り込まれた電子透かし。電子透かしはGoogleのSynthIDという技術で、C2PAはOpenAI独自のものではなく、複数の会社が採り入れつつある業界規格です。どちらかが残っていれば、「OpenAIなど対応する会社が作った」とたどれます。
判定ツールの限界
役に立つ道具ですが、境目ははっきりしています。ここを取り違えると、結果の読み方を間違えます。
- 「AIかどうか」の判定機ではない:Verifyが答えるのは「OpenAIなど対応する会社の印があるか」まで。AI全般を見分ける万能機ではありません。
- 他社のAIは対応しない:SynthIDを使っていないMidjourneyやStable Diffusionなどで作った画像・音声は、印がないので「未検出」と出ます。
- 加工で印が消える:強い圧縮、録音し直し、スクリーンショット、大きな編集などで、透かしや来歴は薄れて検出できなくなることがあります。
- 「未検出=人間が作った証明」ではない:印がないのは「OpenAI由来ではない」というだけ。他社AI製かもしれず、加工で消えた可能性もあります。
つまりVerifyは、「AIか人間か」を裁定する装置ではなく、「対応する会社の印が残っているか」を確かめる道具です。未検出を"人間が作ったしるし"と読み替えないこと。そこだけ押さえれば、「検出/未検出」の表示に振り回されずにすみます。
最後は自分で確かめる
確かめるための道具は、テキストにも画像・音声にも、少しずつ出そろってきました。出典をたどる。その出典を疑って開き直す。画像や音声は来歴を見る。やることは決まっています。
それでも、どの道具にも"ここまで"という境目があります。検出・未検出の表示も、ずらりと並んだ出典リンクも、最後に意味を決めるのは、それを読む人のほうです。何もかも疑ってかかる、という話ではありません。肝心な数字や、気になる一枚だけは、道具の結果をそのまま受け取らず、最後に自分の目を通す。決めるのは、そこからです。
